これは、私が小学校低学年の頃の話です。
私は当時、父の社宅に住んでいました。
うちは1Fに住んでいて、同級生の仲良しのH美ちゃんちが4階にありました。
H美ちゃんとは家が近いのもあり、毎日一緒に公園に行ったり、図書館に行ったりして遊んでいたんですが、H美ちゃんだって毎日予定が必ず空いてるわけではないので、当然私は遊び相手がいない日もあるわけです。これは、そんなとある1日にあった出来事です。
担任の先生から、ある日話を聞きました。
猫は高い所が好きで、ある程度の高いところからでも上手に着地できるんですよ
といった、猫の着地能力の話だったのですが、幼い私は、それが気になって気になって実験したくなってしまったんです。
・・・でも、社宅に住んでいるから猫なんて家で飼っていないし・・・・あ。そうだ!!!!ノラネコがいつもうちのアパートの下によくいたっけ。
いつも可愛がってるノラネコがいました。
一緒に遊んだり、ミルクあげたりしてノラだけど、結構なついてくれて。
この子で着地の実験をしよう!!
小学校低学年の私は単純にそう思いました。
思い立ったら、すぐ実行したくなる好奇心旺盛な私。
ネコとしばらく一緒に遊んで、煮干しとかあげたりしてから、実験をしようと動き始めました。頭を撫でてあげると、可愛い声でニャァと鳴きました。私はネコをそっと抱き上げました。
黒色の可愛いネコちゃん!これから実験が始まるよ♪
でも、・・・・・先生は、高い所って言ってたけど・・・どれくらいの高さなんだろう。そこまで言ってなかったよな
1Fの階段を上り、2Fの踊り場に出ました。
2Fかぁ・・・・・2Fじゃ、ちょっと低いかな?
・・・・・・・階段を更に上り、3Fの踊場へ。。。。。
この辺がいいかな??
・・・ちょっと高いかな・・・
・・・・・・でも、実験だから、こんなところからでも着地上手にできました!!って、方がインパクトもあって、いいのかな?
・・・・・・黙って4Fに上がります。
踊り場から下を見下ろすと・・・ちょっとくらくらする高さで。
子供の私でもちょっと怖かった。
猫って、すごいなぁ、高い所から上手に着地できるなんて。
じゃぁ、実験しよう!!!!
私は、猫を4Fの踊り場から、落とそうとしました。
今考えると。なんて恐ろしいことをしてしまったんだと思います。”高い所って言っても、きっと低めの木とかだったんじゃないかな”って今なら考えそうですが、この時は、意地悪とか、そういうんじゃなくて、そこまでちゃんと考えることもできず「高い」っていうものの基準もわからず、悩みながら4Fまで上がりましたが・・・・・・、4Fなんて、木もないし、下はコンクリートです。
・・・ニギャァァァ!!!
結論から言うと、ネコは、落とさなかったんです・・・・。
落とそうとしたけど、爪で踏ん張ってすごい力で抵抗して、抱いていた私をひっかいて、逃げました。逃げて5mくらい離れた位置で振り返り、私をすごく怖い顔で睨んで
ニギャァァァ!!!
と、叫び、走り去りました。今まで可愛がっていたかわいいネコの顔とは違い、すごく怖い表情でした。そこで、自分がしようとしていたことの恐ろしさをなんとなく理解しました。
私は、自分自身が恐ろしくなり、慌てて家に帰りました。
でも、父にも祖母にも事情は話せません。
”私はしてはいけないことをしてしまったんだ”と自覚したからです。
腕にできた、ひっかき傷は、不器用ながらも自分で絆創膏をつけて、包帯も巻きました。でも、誰にもばれたくないから長袖を着ました。長袖を着れば、傷のこともばれないと思って・・・・・。
その日の夜、私は夢を見ました。
私が小学校を出て歩いてて、ふと振り返ると、すごく後ろの方に女の人が歩いていました。20~30代くらいの大人の女性です。気にもとめず歩き続けました。一人で暇だったし、歩きながら後ろを向くと、さっきの女性が相変わらず私の後ろを歩いてるんですが、さっきよりだいぶ距離が縮まってました。100mくらい離れてたのに、気づいたら50mくらいに距離が縮まってたんです。
私は、小走りで家に向かいました。
「わたし、あの女の人につけられてる!」と気づいたんです。
私も走ってましたが、うしろからも走ってる音がして、それからは怖いけど振り返る気持ちの余裕もないまま、全速力で走り、社宅のアパートまで来ました。
アパートのところで、一瞬後ろを振り返ると、黒い影が一瞬だけ見えました。
私は、泣いてました。涙でボロボロです。
急ぎすぎて、足がもつれそうになりながらも。家に到着し、中から焦って鍵を閉めました。
・・・・・コツン、・・・・・・コツン、
ヒールで1歩ずつゆっくり歩いてる音がしました。
私の心臓が、激しくドキドキしてます。
・・・・うちの方に向かってきてる?!
そして・・・・・足音がうちの目の前で止まりました。
コンコン
・・・・ノックが鳴ります。
私は恐怖のあまり、固まって動けません。
息を殺し、気づかないふりしよう。
そう思いました。
ところが、次の瞬間
ドンドンドンドン
すごく乱暴にドアをたたく音が・・・・・
たすけて、ごめんなさい(´;ω;`)
私は涙でボロボロでした
・・・・・次の瞬間、シーンと静まり返りました。
諦めて帰ったのかな?って思いました・・・・・・が、
次の瞬間、ちゃんとかかってるはずの家の鍵が、カチャリと、ロック解除されて、ドアがすごい力でゆっくりこじ開けられたのです。
私も内側からドアノブをつかんでいて、ドアが開かないように必死でした。
ドアが数センチ開いてしまったとき、隙間から見えたのは
・・・・・・女でした。
黒いワンピースを着ていて、両手の指先に包帯を巻いていたんです。
「ど・・どちら様ですか??」
私は、もう動悸がすごくて、くらくらしつつ、目からは涙があふれて止まりません。
その女が・・・・・・・・・・・・・
「2つ目の者です」
・・・・・と、大きい声でいいました。
そして、女はゆっくりうつむいてた顔を上げようとして、ドアも、ついにすごい勢いでこじ開けられて・・・・・・・
そこで、ぱっと目が覚めました。
全身、すごい冷や汗で、ビッチョリになってました。
わたしは、気づきました。
この黒いワンピースの女は、さっき自分が4Fから落とそうとしていたネコなんだと。
私は生きた猫から発せられた激しい憎悪が、こういう形で返ってきたのだと直感で思いました。
女が巻いていた包帯の両手の指先部分から血がにじんで見えました。
落とされまいと、必死にコンクリの壁にしがみついた時に、傷ついたのだなと思いました。
とてもリアルで怖い夢でした。
このあと、私はネコが怖くなり、長い間、近寄らなくなりました。
そしてあの日のノラネコは、その後アパート付近で目撃しなくなりました。
子供は、時として、残酷です。
よくわからずしてしまう事も多いかもしれません。
でも・・・・。子供だからと言って許されないこともあります。
そんな私も大人になり、親になり、
自分の子供があの頃の私くらいに成長しました。
「ママ~~。でっかいアリがいてね、ボク踏み殺しちゃったんだよー!」
と、報告してきた日がありました。
「もう、そんなことは2度とやめなさい。そういうのは・・・・・自分にすべて返ってくるんだよ」


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